第二回「俺とリレー小説」

 自分の趣味といえば、やはり「創作」であるとしみじみ思う。

 かつて、ACFANというアーマードコア総合ファンサイトは俺の中では「心の故郷」とも言える。

 そんなサイトで、ある企画が立ち上がった。

「リレー小説」。今でももう死語となりつつあるこの文化も、当時ではさほど珍しいものでもなかった。

 リレー小説企画を立ち上げたのは、俺。それに呼応する形で、三人の作家と、俺と仲が良かった人がアドバイザー的な感じ(作家さんではなく、ごく普通のサイト常連)で、リレー小説を作ることとなった。

 ACFANに設置されていたチャットもあったのだったが、リレー小説という性質上、テキストファイルが添付できるチャットを自前で用意し、参加者と共に企画を練った。

 当時はまだAC4が発売されておらず(ACLRもしれない)、創作に使用されるタイトルはAC3系が非常に多かった。

 俺自身もAC3の、サイレイントラインが非常に好きで、他の参加者も例にもれず、世界観はAC3SLの後日談にしようとなった。

 それから、リレー小説チャットで夜な夜な、俺と参加者たちは色々語り合った。

 誰がどの順番で作品を投下するのか、どんなキャラクターやどんなACを登場させるか。

 あるいはリレー小説とは関係ない雑談で盛り上がったりして、朝までチャットするほどだった。

 正直な話、リレー小説については、「後は作品を書くだけ」の段階まで進んだ。現にACFANでプロローグも投下したし、俺自身も幾つかの話を書き終えていた。

 しかしながら、企画は空中分解した。どういった理由で分解したのかはあまり覚えていないというか、忘れてしまった。

 原因も分からない。ただ今になって思うのは、俺自身が企画に熱くなってしまい――その温度差に、参加者は引いていったのかもしれないし、そうでないかもしれない。

 ただ少なくとも、喧嘩別れというあほらしい理由ではないと断言できる。

 今現在、参加者の人たちと連絡を取り合う術はない。二人はいつの間にかネット上から消え、一人は自身の作品を心無い者たちに批判され消えてしまった。最後に残った一人とは数年前、連絡を取り合ったが――音信不通である。

 結局のところ、リレー小説は俺がバトンを握りしめたまま、誰の手に渡ることもなく、終わってしまったのである。

 ここでそのことについて、恨み言を言うのは女々しい。ただ、そういうこともあったなぁと感じつつ、色んな意味で創作をやっていて、一番楽しいと感じた時期でもあった。

 

 企画を立ち上げ、それを成功させるのは苦難の道だ。既に俺はリレー小説を頓挫させてしまったし、その昔、合同サークルという形で主催した際も大失敗してしまった。

 それでも今は個人サークルとして、創作にのめり込んでいるのも事実である。

 失敗があれば、成功もある。

 リレー小説を通じて、俺が得たものは大きかった。

 あの日、朝方まで愉快なチャットをしていた俺と参加者たちの想い出はいつまでも風化出来ない――悲しいけど、楽しかったなぁと今でも感じてしまうのだ。